このページでは借り入れて返済している期間が短いと、自己破産申請が認められないかどうか?について解説しています。
また自己破産ができないとき、別の手段で借金を減額する方法も解説していますので、あなたの現況と照らしながら、最後までお読みください。
借入し返済期間が短くても債務超過なら認められるかも
借入してから数回しか返済していないなど、返済期間が短い借金にであっても、債務超過であることが認められれば自己破産を行なうことできます。
例えば「借入したときは完済できる見込みだったが、その後すぐに勤めていた会社が倒産して収入が大幅に下がってしまったために、完済する見込みがなくなった」といったケースです。
この場合は返済する意思はあったが諸事情によりできなくなったとみなされ自己破産が行なえます。
その一方で自己破産が認められないケースもあり、それが「借入した直後に自己破産を申請した」といったケースです。
この場合は借入金を返済する意思がなく最初から自己破産することを狙っていたとみなされしまい、自己破産が認められません。
これ以外にも、借入したお金をギャンブルに使い、返済するよりも先に使い切ってしまった場合なども同様です。
自己破産ができないケースってあるの?
借入金の総額がそれほど多くないケース
自分の収入に対して借入金の総額が少ない場合は自己破産が認められません。
基本的に自己破産が適用できる金額の基準は「3年以内に借入金を利息含めて完済できるかどうか」となっており、借入金が少ない場合はその基準が満たせないために、自己破産が行なえないようになります。
逆に借入金の総額がそれほど多くなくても、債務者の収入が少なく、3年以内に完済することができない場合は、自己破産を行なうことが可能です。
また、自己破産ができるできないの違いは借入金と収入の比較だけでなく、債務者が保有している資産にも影響を受けます。
例えば不動産や株式など売却すればそれなりの価格になる資産を保有している場合は、その分だけ自己破産が適用される借入金の総額が高くなり、自己破産が利用しにくくなります。
11の「免責不許可事由」のどれかに当てはまるケース
(1) 不当に破産財団価値を減少させる行為
破産財団価値とは破産時に換価処分される債務者の財産のことです。
資産を処分したことによって手に入れたお金は債権者に還元されるのですが、債務者が破産管財人の承認なしに勝手に財産を処分すると「不当に破産財団価値を減少させる行為」とみなされ、自己破産ができなくなることがあります。
(2) 不当に債務を負担する行為
不当に高金利な団体から借入金をしたり、借りたお金で換金用のものを購入しそれを不当に安い価格で売却を行なったりした場合が、「不当に債務を負担する行為」に当てはまります。
こうした行為は「意図的に破産手続きを送らせるためにやった」とみなされるため免責不許可事由となっています。
(3) 不当な偏頗(へんぱ)行為
特定の債権者に対して優先的に返済を行なったり、担保を提供したりした場合は免責不許可となることがあります。
自己破産を弁護士に依頼し、介入通知を債権者に送ってもらった後に、意図的に特定の債権者にたいして返済を行なった場合も不当な偏頗行為に当たりますので注意してください。
(4) 浪費または賭博、その他の射幸により財産を減少させる行為
ギャンブルをするために借入金を行ない、結果として財産を著しく減少させた場合は「債務者には借金を返済する意思がない」とみなされ免責不許可になることがあります。
ギャンブルによって財産を著しく減少させたり負債を増やしたときは駄目ですが、節度を守ってギャンブルをした場合は免責不許可にはなりません。
(5) 詐術によって信用取引をする行為
債務者が債務超過状態であることを認識しながらも、所得情報や個人情報を偽装して借入金を入手した場合は債権者を騙す詐術をしたとみなされ自己破産が適用されないようになります。
ただし、所得情報や個人情報を偽る意図がなく、債権者から特に何も聞かれなかったことによりお金を借りた場合は、債権者側の確認不足ということになり免責不許可には該当しません。
(6) 業務帳簿を隠匿する等の行為
出納帳や売上帳などの業務帳簿をている個人事業主や会社経営者の方限定ですが、会社の会計状況や資産状況がわかる帳簿をどこかに隠したり、資産の没収を防ぐために意図的に帳簿上から資産を消したりする行為が行なわれると、ペナルティとして自己破産が受けられないようになります。
(7) 虚偽の債権者名簿を提出する行為
自己破産をするときはすべての債権者の名前を記載した債権者名簿を裁判所に提出するのですが、意図的に特定の債権者の名前を記載しなかった場合は、自己破産の利用が認められなくなります。
「意図して記載しなかった債権者」がいた場合は違法ですが「書き忘れなどによって漏れてしまった債権者」がいた場合は免責不許可にはなりりません。ただし記載がなかった債権者の借金はそのまま返済することになりますので、気を付けてください。
(8) 裁判所へ説明を拒絶するまたは虚偽の説明をする
自己破産をするときは、弁護士だけでなく裁判所とも協力が必要不可欠なことから、自己破産の手続きの中に裁判官との面談を行なう免責審尋期日などが用意されています。
その免責審尋期日に裁判所へ出頭しなかったり裁判官からの質問に嘘の返答をしたりした場合は裁判官の協力が得られずに免責不許可になることがあります。
(9) 管財業務を妨害する行為
自己破産したときは「破産管財人」が任命され、破産する人が持っている財産の換価や、免責するかどうかの調査などを行ないます。
破産管財人が財産の開示を要求したときに、それを拒否したり偽りの報告をしたりして破産管財人の活動を妨害すると、破産管財人から「免責するべきではない」との意見書が裁判所に提出されてしまい自己破産ができなくなります。
(10) 直近7年以内に免責取得している等
「破産法 第252条第1項第10号」により、7年以内に自己破産や個人再生、ハードシップ免責した方は自己破産ができないようになっています。
7年以上経過していれば法律上は自己破産することが可能ですが、裁判所などから「気軽に自己破産しようとしていないか」などと疑われてしまい、以前よりも審査が厳しくなることには注意してください。
(11) 破産法上の義務違反をする行為
自己破産は借入金が消失するなど強権的なことをする影響で、一部の職業で制限を受けることがあります。
影響を受ける職業は弁護士や司法書士などの士業や、警備員、建設業者、会社役員などです。
自己破産の申し立てから免責決定までの期間で、仕事に対して何かしらの制限が発生するようになります。
免責が決定すればそれ以降は制限を受けることはありませんが、士業の場合のみ免責後に破産手続終了後復権の手続きを行なう必要があります。
上記以外の職業の方であれば自己破産をしたところで仕事に影響はなく、会社を辞職を強制させられることもありません。
また自己破産をすると20万円以上の財産は全て没収されることとなるのですが、仕事で使用する道具などに関しては例外となっていますので安心してください。
11の「免責不許可事由」
不当に破産財団価値を減少させる行為
不当に債務を負担する行為
不当な偏頗(へんぱ)行為
浪費または賭博、その他の射幸により財産を減少させる行為
詐術によって信用取引をする行為
業務帳簿を隠匿する等の行為
虚偽の債権者名簿を提出する行為
裁判所へ説明を拒絶するまたは虚偽の説明をする
管財業務を妨害する行為
直近7年以内に免責取得している等
破産法上の義務違反をする行為
自己破産の手続き費用が用意できない
自己破産をするときは弁護士に対する着手金や成功報酬はもちろん裁判所に対しても申立手数料や予納金を支払わなければいけません。
自己破産をする人は手持ちのお金があまりないこともあり、費用が払えないということも多いです。
こうしたときはどうすればよいでしょうか。
1つ目の対処法は「分割払いをする」というものです。
弁護士によっては着手金や成功報酬の分割払いに応じてくれるところがあり、そうしたところに自己破産の依頼をします。
裁判所の費用に関しては一括払いが原則ですが、分割払いにも応じてくれることもあるので相談してみましょう。
2つ目の対処法は「法テラスを利用する」というものです。
法テラスとは国が用意した施設の1つであり、そこに相談をすれば自己破産をしてくれる弁護士などを紹介してくれます。
法テラスから紹介された場合、弁護士に支払う費用が通常よりも安くなるのが特徴です。
それでも支払えないという場合は法テラスが費用を一時的にたて替えてくれるので確認してみてください。
自己破産ができない場合、借金の減額はどうすればいいの?
別の債務整理の手段をとる
免責事由などによって自己破産はできないが、そのまま返済することもできない状態になった場合は、「任意整理」や「個人再生」など自己破産以外の債務整理の方法を選ぶ必要があります。
任意整理は「将来利息などをカットした状態で借金を返済してく」という方式のことです。
借金の元本は基本的に減らさないことから適用する条件がゆるく、多くの方が利用できるようになっています。
個人再生は「裁判所にお願いして借金の元金を減らしてもらう」方法のことです。
元金が完全になくなる自己破産とは異なり、個人再生は返済できるところまで借金の元金を減らすことになるため、自己破産が出来ない方でも個人再生ならできるという場合があります。
借金の消滅時効まで待つ
借金にも時効というのがあり、基本的に最期の返済をしてから5年以上経過した場合は、「借金の消滅時効」が行えるようになり、借金自体を消すことが可能です。
債権者が裁判所に対して訴訟や支払督促を行なった場合は、判決がでてから10年以上経過しないと借金の消滅時効が成立しませんので気を付けてください。
借金の消滅時効は時間が経過したら自動的に発生するものではなく、所定の手続きが必要です。
具体的には「時効援用通知書」というのを作成し、それを債権者に内容証明郵便で郵送することになります。
通知書を受理した債権者側が何もしてこなければ借金の消滅時効が認められますが、もしも債権者から電話などが来て、そこで「借金の返済をする」や「分割で支払い」など借金の存在を認めてしまう発言をすると消滅時効がリセットされるので気を付けましょう。
ポイント
自己破産の手続きは、法律の専門家・弁護士に任せましょう
自己破産は弁護士などに頼らずに自力で行なうことも一応は可能です。
しかし「20種類以上の書類を用意する必要があり、1ヵ所でも間違いがあるとその都度修正しなければいけない」「債権者たちと自力で交渉しなければならない」といったさまざまな困難が待ち受けています。
返済できないような追い詰められた状況で20種類もの書類を正確に記載するのは難しく、かつ負担もまた膨大ですので、自己破産したいときは法律の専門家である弁護士に依頼するようにしましょう。