過払い金が発生する理由とその仕組み
グレーゾーン金利での支払いが過払い金
借金には金利の上限を定める法律が2通りあります。
ひとつは商法の一部である出資法,もうひとつは民法の一部の利息制限法です。
利息制限法は、現在も貸金業者から借り入れるときに適用される法律で、借金の元金によって年利率が変わります。
金 額 | 利 率 |
1 ~ 99,999 円 | 20% |
100,000 ~ 999,999 円 | 18% |
1,000,000 ~ 円 | 15% |
出資法は、以前に多くの貸金業者が上限金利として適用していたもので、年利率29.2%です。
平成22年(2010年)6月17日以前までは出資法の上限金利での貸付が適法だったためですが、この出資法と利息制限法の利率の差を「グレーゾーン金利」と呼びます。
そしてこのグレーゾーン金利で支払っていた利息分が過払い金です。
過払い金が発生する条件
過払い金は払い過ぎた利息なので貸金業者へ返還を請求できます。
では過払い金が発生するのはどのような条件を見てみましょう。
グレーゾーン金利で貸付を受けていた
平成22年(2010)6月17日以前まで、貸金業者は出資法の上限金利まで利息を取っても違法ではなかったので、消費者金融はもちろんクレジット‐カードでこの日付より前に取引開始があった人は、過払い金が発生している可能性が大いにあります。
完済から10年を経過していない
過払い金は、最後に返済した日から10年で時効になります。時効より後だと過払い金請求自体が業者に対してできません。
具体的に例をあげると、2007年8月1日に借り入れし、2017年8月1日に完済した。
その後この業者との間に借入・返済がなかった場合、時効は完済した日から10年後の2027年8月1日となります。
また、法改正により時効については、「2020年4月1日以降に完済した場合、時効は最後に返済した日から10年(または権利が行使できることを知ってから5年)」に変わりました。
例をあげると、2007年8月1日に借り入れし、2015年8月1日に完済した。
半年間取引がなくて、2016年2月1日に再びこの業者から借入し、2017年10月1日に完済した場合、
「連続した一連の取引」として、はじめに借り入れした2007年8月1日から発生した過払い金の請求が可能になりました。
途中、同じ業者と取引がなかった期間があっても、すべての取引を過払い金算出の計算対象にします。
なので、完済した日から10年を経過していないうちに、弁護士に貸金業者への過払い金請求の相談をしましょう。
過払い金が発生しない条件
過払い金は、平成22年(2010)6月17日以前のグレーゾーン金利で取引していたことが発生条件のひとつにあがっています。
従って、この翌日以後から初めて借り入れした場合は、利息制限法の上限金利内で取引しているので、過払い金は発生していません。
また、住宅ローン,自動車ローンなど銀行系の目的別ローンは、もとも利息制限法の上限金利内で貸付を行なっているので、過払い金は発生していません。
クレジットカードのショッピング枠は、借入金ではなく立替金の扱いとなるので、これも過払い金は発生していません。
最後に、長期延滞などで、貸金業者から裁判に訴えられることがあります。裁判になった場合も、過払い金は発生していません。
逆にいうと気軽に借り入れることがウリのクレジットカードのキャッシング、および消費者金融のキャッシングの実績がある場合は、取引開始時期と完済後の経過期間を考慮して、過払い金請求は専門家である弁護士に早めに相談しましょう。
払い過ぎた利息=過払い金を請求する方法
自身に過払い金があるのかどうかわからない場合
過払い金請求ができるかどうかを調べるには、貸金業者へ取引履歴の開示を請求することから始めます。
自身でこまめに取引の記録を取っていたとしても、業者から取り寄せましょう。
以前は取引履歴の開示を求めたとき、渋るかもしくは最後まで出さない業者もありました。
ただし現在は貸金業法19条の2にて、自身が貸金業者に対して取引履歴の開示を求めることができ、貸金業者はこれを拒めず開示しなくてはいけないと定められています。
取引履歴の開示を要求したぐらいでは、ブラックリストに載らないので安心してください。
取り寄せた取引履歴をもとに、業者に支払っていた利息制限法の上限金利以上の利息金額を、利息制限法の上限金利で再計算します。
完済していればもちろん、いま現在返済中でも、過払い金請求は可能です。
一般的に、一度借り入れして返済一方の取引のケースより、キャッシング枠内で何度も借入,返済を繰り返している取引のケースがほとんどなので、計算のしなおしは複雑です。
複雑な計算もあいまって、自身で過払い金請求を行なうのはかなりホネが折れるでしょう。
債務整理の専門家である弁護士に相談・依頼すると、正確に過払い金を算出してもらえるので、過払い金請求を安心して任せられます。
すでに借金を完済している場合
すでに完済している場合は、速やかに過払い金請求のアクションを起こしましょう。
過払い金は完済した日(取引終了日)から10年を経過すれば時効になるので、それまでに請求しなくては取り戻せないからです。
また、業者が倒産している場合も、請求先がないため、過払い金を取り戻せません。
まれに債権譲渡されていた場合、過払い金請求ができることもありますが、取り戻せるお金がどのくらいになるのか不明なことが多いです。
従って、完済後一日もはやく過払い金請求を行ないましょう。
現在も借金を返済中の場合
現在、借金を返済中でも過払い金請求が可能です。
利息制限法の金利で再計算したうえで過払い金が発生していたら、現在返済中の借金の返済に充てることができます。
これによって借金が減額できたり、あるいはゼロにすることができます。
取引期間が長いと、払い過ぎた利息が返ってくるケースもあるので、特に平成22年(2010年)6月17日以前からの取引なら、過払い金請求のアクションを起こしてみましょう。
ただし、借金返済中に取り戻したお金を使っても、借金が残る場合に限り、ブラックリストに載ることに注意してください。
過払い金の請求は一刻もはやく手続きしましょう
過払い金は貸金業者の経営状態によって、満額が返ってくるとは限りません。
交渉することで、貸金業者からは大体70~80%、信販会社で90%ぐらいの返金の相場になります。
こういった業者との交渉は専門知識も要りますし、そもそも平日の日中にしかできないなどの制約もあるので、弁護士に相談を持ち掛け、納得してから過払い金請求を依頼しましょう。