借金があれば生活保護の受給ができないのでしょうか?
もし生活保護の受給を受けられたなら、給付金を借金返済の原資にしてもよいのでしょうか?
こういった疑問にお答えしています。
また、生活保護受給中、新たに借金することは問題ないのかについても解説していますので、最後までぜひお読みください。
借金があっても生活保護の受給はできる
借金があったとしても生活保護を受給することそのものはできます。
しかし生活保護の給付金で借金を返済することは原則不可能なため、結論として借金はそっくりそのまま残ってしまうことになりかねません。
それだけでなく借金返済を放置すれば、利息が膨れ上がることになってしまう可能性もあります。
生活保護の受給前に任意整理を行なうことや、申請後であったとしても自己破産を行なうことで、借金問題を解決へ導くことができます。
借金があるかないかは生活保護の受給要件に関係なし
借金の残債あるなしは、生活保護の受給要件と関係ありません。
生活保護の受給要件は、「国が定める基準の生活費の最低額に、収入が達していない」ことです。
また、次の要件を満たしていなければなりません。
・不動産や自家用車、有価証券などの利用可能な資産がないこと
・健康上の理由により、労働収入を得られないこと
・親など親族から支援を受けることができないこと
・生活保護以外に利用できる公的制度が存在しないこと
生活保護の対象になるには、資産や能力の3つの活用が前提条件になります。
その3つの活用をし尽くしても生活費に困っていたら、生活保護の対象になります。
No | 種 類 | 内 容 |
1 | 資産の活用 | 預貯金等々の資産の活用 |
2 | 能力の活用 | 働く能力があるケースでは、その能力に合うようにして働く |
3 | その他の活用 | 年金や各種手当の活用のほか、扶養義務者からの援助の活用 |
なお生活保護の給付金は、生活していく上で必要なお金です。
ぜいたくの範疇に含まれる遊興費や交際費などは支給されません。
借金の返済に生活保護費を充てるのはダメ
国は、生活保護制度を「生活に困窮する方に対して、その困窮の程度に合うようにして必要な保護を行ない、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長する」ためにあると取り決めています。
生活保護がベースになって受給できる保護費というのは、衣食住というような「最低限度の生活」を保つために使うものになりますので、借金の返済に使うことは原則不可能なのです。
生活保護受給中に新たに借金するのもダメ
生活保護の給付を受けながら、新規の借金をすることは、止めた方がいいでしょう。
その理由は、生活保護を受給しながら新たに借り入れをした際、その金額は福祉事務所に収入と認定されて、生活保護の支給額を減らされたり、最悪、生活保護の打ち切りになるからです。
生活保護の受給の前に、まず借金を整理する
生活保護を受給するに当たり、現在に至るまでの借金は債務整理の手続きで解決しましょう。
債務整理とは、現在に至るまでの借金を減額あるいはゼロにする手続きです。
借金返済のためにまわしていた金銭をちょっとでも生活にまわすことができれば、ケースによっては生活保護を受けずに日々を送ることが可能になるかも知れません。
ちなみに債務整理には、次にあげる4種類の方法が存在します。
任 意 整 理 |
個 人 再 生 |
自 己 破 産 |
特 定 調 停 |
弁護士に相談して債務整理の手続きをする
債務整理の手続きは、弁護士に相談しましょう。
弁護士に債務整理を依頼すると、次のようなメリットがあります。
最適な解決策を提示してくれる
専門知識がないと、どの債務整理の方法が自身に最適か判断しづらいですが、弁護士に相談することで解決できます。
債権者に対して交渉をしてもらえる
債務整理の中で、最も利用されている手続きが任意整理になります。
任意整理は債務整理の手続きのなかで唯一、法的手続きではないので、債権者との交渉によって残りの弁済額が決まります。
債権者と交渉する場合、法律の知識や債務整理の経験がないと一方的に不利な条件で任意整理が進むかも知れませんが、豊富な知識と経験がある弁護士なら相手と話し合い、妥当な解決策を導き出してくれます。
時間や手間があまりかからない
債務整理の種類にもよりますが、手続きにはおおまかに次のような作業が生じます。
・貸金業者を対象にした取引履歴の開示請求
・利息制限法に基づいた引き直し計算
・手続きに必要不可欠な書類の作成
・債権者や裁判所とのやりとり
本やインターネットなどの情報を基にして自身で行なうことは可能ですが、間違いなく仕事やプライベートの時間を圧迫します。
それに手続き書類に不備があれば、何度も手直しが必要になります。
自身で債務整理の手続きを行なうのは、かなり面倒なことと思ってよいでしょう。
弁護士なら手続きに必要な作業ほぼすべてを委任出来るため、円滑に債務整理の手続きを進めてくれます。
月々の借金返済額を減額するなら任意整理
任意整理の手続きを経て債権者と合意が得られた場合、ほとんど返済額は元金だけで済みます。
それを3~5年の分割払いで返済していくため、現在支払っている月々の返済額より減らせることが可能です。
例:
残債務300万円を5年の分割払いにする→毎月の返済額を約6万円から5万円に減額可能。
残債務500万円を5年の分割払いにする→毎月の返済額は約10万円から約8万3000円に減額可能
借金返済を免除してもらうには自己破産
かなり多くの方が個人が自己破産を行なうと、借金を返済する義務が免除されるというように考えられています。間違いではないのですが、厳密に言えばちょっとだけ違います。
自己破産手続きと言うのは、原則的に破産者の財産を処分してそれを債権者に配当する手続きになります。
破産者の財産が債務よりも少ない場合は、配当したところで支払いきれない債務が残りますが、とりわけ何も行なわれません。
破産者の財産を処分しても支払いきれない借金,債務の支払い義務ついては、免責手続きといった破産手続きとは別の手続きによって、返済免除の許可を仰ぎます。
返済免除が認められることを免責確定といい、この時点で残った債務に対する支払い義務は無くなります。
通常、免責手続きと破産手続きは、同時進行していきます。
破産・免責の両手続きによって破産者の財産を処分して債権者に配当し、それでも支払い切れない債務の支払い義務は免除される仕組みです。
債務整理によって生活保護を受けなくて済むことも
先に述べた通り債務整理は、現在に至るまでの借金を減額またはゼロにする手続きです。
生活保護を受ける前に手続きしておくとよいのは、借金がゼロになる自己破産を選択することを勧めます。
任意整理・個人再生・特定調停においては、借金が減額されても数年間にわたり返済し続けなければならないことから、生活保護受給中にはたいへん負担になります。
また、生活保護費受給が借金の返済のためと理由付けされてしまい、不正な受給とみなされてペナルティを課されるケースもあります。
自己破産・免責は借金をゼロに出来ますから、生活保護の受給に支障がありません。