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離婚のとき残る借金は生活費と認められたら分与になることも
離婚において借金がある配偶者がいるケースでは、「財産分与の金額に影響は出てくるの?」「借金も財産分与されてしまうの?」など、気がかりなことがたくさんありますよね?
離婚の際は原則、共有財産の形成における夫婦それぞれの割合は2分の1とされるため、財産の分与も折半、つまり2分の1の比率です。
夫婦の共同生活にて負った借金に関しては、次の2通りの借金が存在し、これも“財産分与”の対象になる可能性があります。
・夫婦の生活費としての借金
・夫婦の財産取得が目的の借金
借金のうち、財産分与の対象となるもの
夫婦の日常生活のためにした借金
(衣食住の費用・医療費・子どもの学費・適度な交際費や娯楽費・その他家族が生活するために必要な費用)
夫婦の生活費の補填ためにした借金は、財産分与の対象になります。
夫婦の生活費のための借金とは、大きくは次のとおりに分類されます。
後の2種類はかなり大まかな定義ですが、常識の範囲で適用されます。
No | 内 容 |
1 | 衣食住の費用 |
2 | 医療費 |
3 | 子供の学費 |
4 | 適度な娯楽費・交際費 |
5 | これ以外に家族が生活するために必要な費用 |
夫婦の財産を購入するためにした借金
(夫婦が共有して使用する資産価値を持つ高額な財産の購入費用)
こちらは代表的例で、住宅ローンがあります。
なお「高額な財産」で思い浮かぶ自動車については、新車登録から6年で帳簿価格がゼロになることから、ヴィンテージもののクルマでない限り、財産に組み入れないこともあります。
住宅ローンが残存している場合は、婚姻期間中に購入した家であっても、ローン残債と家の評価額によっては、財産分与の対象とはならないことがあります。
ちょっとわかりにくいですよね?例をあげて解説します。
・家の時価がローン残額を上回っている時(アンダーローン)
アンダーローン(家の時価がローン残債より高いケース)の場合、財産分与の対象となります。
分与する額は、家の時価からローン残債をマイナスした、残存評価額になります。
例:家の時価が900万円、ローン残債が400万円
900万円 ― 400万円 = 500万円
家の残存評価額のプラス500万円が、財産分与の対象とされます。
・家の時価がローン残額を下回っている時(オーバーローン)
オーバーローン(家の時価がローン残債より低いケース)の時には、家の時価からローン残債を差し引くとマイナスですから、資産としての価値は無しとされるため、財産分与の対象外となります。
例:家の時価が600万円、ローン残債が800万円
600万円 ― 800万円 = ―200万円
家の残存評価額がマイナスになるため、財産分与の対象とはされません。
オーバーローンのケースでは、ローン残債の分担を求めることはできません。
ということは離婚後もローン残債がある場合、借金を支払っていくのは住宅ローン契約者本人となります。
共働き世帯が増え、妻のほうもフルタイムで働いて、ある程度の収入を得ているとしても、住宅ローンを組む際の契約者本人は夫であるケースがまだまだ多いので注意が必要です。
借金のうち、財産分与の対象となるもの
自分の趣味や娯楽のためにした借金(ギャンブルやブランド品購入などの費用)
結婚中の借金でも、いずれか一方の趣味や娯楽のための借金は、「夫婦の共同生活のための借金」とはいえず、財産分与の対象になりません。
例えば、ギャンブルの借金や、ブランド品購入の借金などがそれにあたります。
結婚前にした借金(結婚前に契約した住宅ローンやカードローン)
結婚前、ないしは結婚し別居後に築き上げた財産に関しては、原則として婚姻中に夫婦の協力により築き上げた共有財産とはいえないので、財産分与の対象にはなりません。
生活費が足りないためにした借金は、離婚のときどうなるの?
夫が家計に生活費を入れないなどで,妻がキャッシングやカードローンを使い生活費を工面していたケースであれば,これがもとで負った負債は、離婚の際の財産分与を決める事情の一つとして考慮されます。
通常、夫婦で築いた財産がマイナスの場合には、財産分与が行なわれません。
しかし、日常生活するうえで必要な出費のための借金というなら、財産がマイナスのケースでも、上記のケースなら夫が支払い義務を負うことがありえます。
ただ、日常生活を営むための負債と評価・判断できない場合、負債を負った方が支払い義務を負ったままとなります。
負債の分与という形でなくて話し合いで決着をつけるなら、ケース毎の事情を考慮した弾力的な解決というのも不可能ではありませんが、かなり困難でしょう。
このあたりは一律に判断できないことなので、話し合いの進みで変わることがあります。
夫婦のうち一方が“理屈として合わない負担”と認識している負担を、もう一方がおいそれと背負ってくれることは稀ですから,最悪は、借金をした側が負担することを念頭に置くほうがよいでしょう。
財産分与の計算方法
財産分与は、負債よりも資産の方が多い場合では、公平に財産を分けます。
次に記述するのは、財産分与の計算方法です。
資産-負債>0の場合
資産から負債を差し引いた差額が、財産分与の対象になります。
例:夫の資産が1,000万円、負債が600万円で、妻の資産が200万円、負債が100万円とします。
この場合、{(1,000万円-600万円)-(200万円-100万円)}÷2=150万円が分与対象財産になります。
このように対応するのが公平であると定義されています。
資産-負債≦0の場合
資産より負債が多いケースだと、多少例外はありますが、通常なら負債は財産分与の対象にはなりません。
例:夫の資産が600万円、負債が800万円、妻には資産も負債もない場合
財産が分与されるなら負債も分与されて、200万円の半分の100万円の負債を妻が引き取ってくれそうですが、夫名義の200万の負債は、基本的に夫が背負うことになります。
このとおり、夫婦のいずれかが作った借金に関しては、夫婦の負債よりも夫婦の資産が多い場合は「夫婦の負担」の形を取り、残った財産は分与の際に折半します。
資産よりも負債が多いケースでは、夫婦のうち他方は負担しないというわけです。
離婚後に財産分与の請求可能な期間は2年間
相手に財産分与を求める権利(財産分与請求権)は、離婚成立後2年以内に財産分与の請求を行わなければ100パーセント権利が消滅します。
財産分与請求権は、「離婚成立後」2年です。
婚姻中に別居していたとして、「別居後」2年ではありません。
財産分与請求権がある離婚成立後2年以内に協議、調停、裁判などで財産分与に対する権利が決定した場合、財産権は10年間消えません。
借金を抱えながら離婚になったときは、専門家の弁護士に相談を!
借金を抱えつつ離婚になったときは、借金問題・離婚問題に通じた専門家の弁護士に相談をしましょう。
離婚問題に借金問題が絡むと、離婚協議がすんなりいかないことが多々あります。
両方の問題に精通した弁護士に相談することで、自身の精神的負担を軽くすることが可能です。
特に借金は離婚に際して、債務整理で身軽にすることをおススメしますので、まずは弁護士に相談するのがよいでしょう。