いったんどんな場合が当てはまるのか見てみよう。
目次
任意整理で借金の元金は減らせる
任意整理によって借金の元金ないし元本を減らすことについてですが、残念ながら減らすことはほとんどできません。
これは任意整理の思想によるところが大きいです。
任意整理とは「本人ないしその代理人が債権者と交渉することによって返済期間を伸ばしたりする返済方法」のことです。
その根底には「利息は減らすけれど元本は基本的に全額返済する」という思想があるため、任意整理では元本はほとんど減らないようになっています。
ただし元本を減らせないのは原則であり、今までの返済状況や今後の返済方法次第では減らすこともできるようになります。
任意整理で元本を減額できる2つのケース
一括返済で元金を減額する
任意整理で借金の元本を減らす方法の1つが「一括返済をして元金を減額する」ことです。
任意整理では債権者と交渉して、毎月の返済額などを決めてから改めて返済をしていくというものなのですが、実は予定を前倒しにて返済をすることは可能となっています。
友人たちからお金を集めて借金を一気に減らすことができたら、それを材料に債権者と交渉をして借金の元金を減らすようにします。
債権者側からすると債務整理が起きた時点で、返済にトラブルが生じたということになるので、利息の支払いよりも元本の返済を何よりも優先するという心理が働き、借金の残高が少ないなど状況次第では債権者側も交渉に応じて減額してもらえる場合があります。
ただし借金はまだ残っていることから立場的にはまだ債権者側のほうが強く、確実に元本を減らすことはできないので、その点は気をつけてください。
過払い金で借金を清算して元金を減額する
任意整理で元本を減らす2つ目の方法は「過払い金を利用する」というものです。
消費者金融などで返済するときの利息は、現在では利息制限法で定めた金利が上限となっていたのですが、以前はより利息の高い出資法での利息の設定も認められていました。
ところが平成18年より出資法での利息設定は違法ということを裁判所が認定したため、出資法を根拠に設定した利息は「過払い金」という扱いになり取り戻すことができるようになりました。
任意整理をするときは最初に過払い金があるかどうかのチェックが行なわれ、あった場合は債権者相手に請求が行なわれます。
取り戻した過払い金を借金の返済に当てればその分だけ元本を減らすことができます。
任意整理で元本を減額できる2つのケース
一括返済をして元金を減額する
過払い金を返済に充てる
元金の減額が無理な時(貸金業者が減額に応じない)どうすれば…
返済期間を延長する
任意整理では貸金業者側の対応によっては元金の減額に応じてくれないことがあります。
そうした場合は「返済期間の延長を行なう」ようにしましょう。
元金の減額に応じてくれないからといっても、債務者側で生活できなくなってしまっては元も子もありません。
そのため債務者が無理なく支払える金額まで返済額を減らし、その分返済期間を長くするという方法が任意整理ではよく用いられています。
「返済期間が長くなるほど、それだけ発生する利益も増えてしまうのでは」と疑問に思う方もいるでしょう。
ですが任意整理をすると、それ以降は利息が発生しなくなります。
任意整理をすると利息だけでなく遅延損害金の発生などもストップするようになり、借金が増えていくことはないので安心してください。
債務整理の平均的な返済期間は3年から5年ほどですが、それでも借金の返済に関する負担が大きい場合はもう数年ほど延長することができます。
債権者側からもすると借金の返済が滞るよりも、期間が長くなっても確実に返済されるほうがメリットが大きいため、期間延長の交渉は比較的やりやすいという特徴があります。
別の債務整理の方法を検討する
2つ目の方法は「別の債務整理を検討する」というものです。任意整理は返済期間を伸ばすことによって無理ない返済が行なえるのですが、さすがに10年20年も支払い続けることは認められません。
それくらいの期間をかけないと借金の元本が返済できないということは、任意整理での完済が難しいということになりますので、個人再生や自己破産での債務整理が必要となります。
個人再生や自己破産をすると元本を大幅に減らすことが可能です。
ですが、それらを実行すると官報に債務者の名前が載ったり、車など一定額以上の資産は強制的に売却されしまったりと、任意整理にはないペナルティを受けることにもなるので気をつけてください。
元金減額の交渉は自分自身でできるの?
債権者は相応の理由でない限り本人からの減額の交渉には応じない
個人再生や自己破産などは裁判所を経由して行なうことから債権者側もそれに従わなければいけないのに対して、任意整理は裁判所を挟まず債権者と交渉をして返済額などを決めるという性質であることから、債権者に対する強制力はほとんどありません。
そのため債権者側も、任意整理をしなければ返済が滞ってしまい債権者側にも損失が発生してしまうなど、任意整理をする明確理由がない限りは、交渉などに応じてくれないことがあります。
もしも、任意整理をしたいけれど債権者側がそれに応じてくれない場合は「個人再生ないし自己破産の検討をしている」という旨を債権者側に伝えるようにしましょう。
個人再生や自己破産は元金が大幅に減ることになるため、債権者側にとって任意整理からの切り替えは大きな痛手となります。
そのため債権者側も「個人再生や自己破産をされるぐらいならば任意整理のほうがいい」という心理が働いて交渉に応じてくれる場合があります。
任意整理によって保証人への負担は変わるの?
保証人には減額しない額の請求がいくこともある
任意整理をするときの注意点としてあげられるのが「保証人に迷惑がかかる」という点です。
保証人を立てていた借金に対して任意整理をした場合、残りの借金に対する返済要求が保証人にいくことがあるなど保証人に迷惑をかけてしまうことがあります。
この場合は債務者だけでなく保証人も一緒に任意整理をすれば債権者からの請求がいかなくなります。ただし、保証人も任意整理をすると債務者と一緒に信用情報機関いわゆる「ブラックリスト」に名前が記載されてしまうなどペナルティを受けることになります。
保証人がついている借金に対して任意整理をするときは、その旨を保証人に伝えて保証人側はどう対応するのかを決めてから行なうようにしましょう。
なお、複数の企業から借金している場合、債務者は任意整理をする借金としない借金を選ぶことができます。
保証人のついていない借金だけを任意整理して、保証人がついている借金はそのまま返済していくようにすれば保証人に迷惑をかけることはありません。
借金の元金減額は、専門家に相談することが大事
任意整理で借金を減額したい場合は、債権者への交渉を避けて通ることはできません。
ですが、任意整理は強制力がないので債権者側が拒否することができたり、拒否しなくても双方の利害が衝突して思うように進まなかったりすることがあり、債務者の自分の力だけで行なうことはかなり大変です。
弁護士など専門家に任意整理の依頼をすると、債務者からの呼びかけに応じなかった債権者が応じてくれるようになったり、うまく交渉を進めたことでいい条件での返済計画をたてられたりと、さまざまなメリットを得ることができます。
任意整理をするときはできるだけ専門家に相談をして行なうようにしてください。